『侍道外伝 KATANAKAMI』は、2020年2月20日にスパイク・チュンソフトからPlayStation 4/Nintendo Switch/Steam向けに発売された剣術アクションRPGであり、開発はアクワイアが担当した。『侍道』シリーズのスピンオフに位置づけられ、シリーズ初のクォータービュー視点で進行するローグライク×ハクスラ型のアクションタイトルである。

本作の舞台は、初代『侍道』の前日譚にあたる峠の一本松周辺で、鍛冶屋・堂島軍二が借金のカタに娘・七海を連れ去られたところから物語が始まる。主人公(流浪の侍)は、堂島と出会い、借金返済のために夜な夜な「辞界(じかい)」と呼ばれる異界のダンジョンに潜り、素材と刀を集めて金を稼ぐことになる。昼は鍛冶屋の営業と三勢力の介入工作、夜はダンジョン探索という2部構成を軸にしたゲーム設計が特徴となっている。

ゲームシステムは、構えごとに攻撃モーションが変化する9種の「剣術流派」に加え、抜刀・納刀の切替、スタミナや集中力ゲージの管理、気絶・ガード崩しといった『侍道』シリーズでおなじみの要素を踏襲しつつ、ハクスラとしての収集要素とパーツ強化も導入された。戦闘は最大5本までの刀を同時に所持・装備できる「刀神システム」によって構成されており、連続使用による「極見(きわみ)」発動や抜刀・納刀アクションとの連携で、複雑な連撃を繰り出すことが可能となっている。

ダンジョンで手に入れた刀は、「刀工房」で分解・鍛造・強化が可能で、銘・素材・属性・特殊効果(号)などがランダムで生成されるシステムが実装されている。また、昼間の経営パートでは「赤玉党」「黒生家」「宿場町」の三勢力の関係性に干渉し、戦況バランスを崩すことで刀の需要や売上が変動する政治的要素も存在する。売却価格や注文依頼などを通じて借金返済を目指すことが目的であるが、ストーリーの進行によってマルチエンディングが分岐する構造も用意されている。

オンライン要素としては、他プレイヤーの用心棒を雇って戦闘に投入したり、他人の鍛冶屋に乗り込む「破刀」機能を使用して対人戦を行うことも可能で、武器の奪取や共闘などの交流要素が実装されている。戦闘視点は見下ろし型の固定カメラだが、特定の演出やアクションでは演出寄りのカメラに切り替わるなど、演出面にも一定の工夫が見られる。

演出面では、過去作でおなじみのキャラクター(堂島軍二、赤玉党、黒生家など)が登場し、「土下座」や「用便」などのユーモア演出、「火消し」やNPC反応の変化など、シリーズ特有の“和バカ”な演出も健在である。また、刀のデザインにはファンタジー要素も加味され、現実の刀剣から着想を得たものに加え、雷や火を纏った刀、巨大武器風のモチーフも登場する。

一方で、ランダム生成ダンジョンの単調さ、操作UIの不親切さ、視認性の問題、素材ロストの不具合などが指摘されており、ゲーム性においては粗削りな面も多い。それでも、和風ローグライクとしての意欲的な構成、刀収集のやり込み性、そして『侍道』らしい独自の空気感は高く評価されており、シリーズファンや和風アクションRPG愛好者からは一定の支持を受けている。