『マリンエクスプレス殺人事件』は、海底を走る豪華列車という完全な密室空間で発生した悲劇の真相を追うミステリー・ビジュアルノベル。2022年09月01日にレイニーフロッグからNintendo SwitchやPlayStation 4などで発売されました。物語の舞台は、カリフォルニアと日本を結ぶ夢の海底超特急「マリンエクスプレス号」。処女航海に参加した名門女子校の生徒たちは、引率の教師が殺害されるという事件に遭遇し、楽しいはずの修学旅行は一転して疑心暗鬼の渦巻くサスペンスへと変貌します。
ゲームプレイは、主人公の女子高生「東川乱子(とがわ らんこ)」の視点を通じて、テキストを読み進めることで進行するオーソドックスなノベル形式を採用しています。プレイヤーが複雑な推理を行ったり、分岐を選択したりする要素は極力排除されており、物語そのものを純粋に楽しむ「キネティックノベル」に近い構成です。唯一のインタラクティブな要素として、乱子のスマートフォンを確認し、登場人物のプロフィールや列車の状況といった情報を整理しながら、探偵小説のような論理的な展開を追体験できます。
本作の最大の特徴は、PC-98時代の名作アドベンチャーゲームを彷彿とさせる、ドット絵で描かれたレトロなグラフィック表現です。16bit風の懐かしいビジュアルと、現代的なスマートフォンやインターネットスラングを交えたテキストが融合し、独特の雰囲気を醸し出しています。古典的なクローズドサークル・ミステリーの様式美を守りつつ、ユーモラスな会話劇や意外なトリックを盛り込み、短編小説を読むような感覚で手軽に完結する良質なミステリー作品となっています。
本作は、スペインのインディーデベロッパー1564 Studioが開発した『Murder on the Marine Express』の日本語ローカライズ版です。「マリンエクスプレス」という列車名や舞台設定は、手塚治虫のアニメ『海底超特急マリン・エクスプレス』を連想させますが、内容はアガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』に代表される古典的な本格ミステリーへのオマージュに満ちています。列車という閉鎖空間でのドラマに惹かれた方は、ミステリーの金字塔である原作小説を読むことで、そのジャンル特有の面白さを再確認できます。













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