『Vampyr -ヴァンパイア-』は、第一次世界大戦末期、スペイン風邪のパンデミックに覆われたロンドンを舞台に、医師でありながら吸血鬼となってしまった男の葛藤を描くアクションRPG。日本では2020年12月24日にGame Source EntertainmentからPlayStation 4およびNintendo Switchで発売されました。死に瀕した街で、人々を救う医師としての誓いを守るか、それとも生き延びるために吸血鬼の本能に従って市民を犠牲にするか。プレイヤーは主人公ジョナサン・リードとなり、倫理と渇望の狭間で揺れ動きながら、自身の呪いと疫病の裏に潜む真実を追うことになります。

街に暮らす60人以上の市民たちは、それぞれが名前や生活、人間関係を持っており、彼らと対話することで隠された秘密や病状を診断できます。最大の特徴は、彼らが「経験値の塊」でもあるという点です。市民を吸血すれば莫大な経験値を得て強力なスキルを即座に習得できますが、その代償として街の健全度(健康状態)が悪化し、商店の品揃えが悪くなったり、最悪の場合は区域ごと崩壊して怪物が徘徊する廃墟と化したりします。逆に、医師として薬を処方し彼らを治療すれば、街は安定しますが、プレイヤー自身は飢えに苦しみ、戦闘での苦戦を強いられます。誰を生かし、誰を犠牲にするかという選択は、すべてプレイヤーの良心と戦略に委ねられています。

『ライフ イズ ストレンジ』などを手掛けたDONTNOD Entertainmentらしい、重厚なストーリーテリングと選択の重みが作品全体を支配しています。戦闘は超常的な吸血鬼の能力と近接武器、銃器を組み合わせたアクションスタイルで、血を操るスキルや影に溶け込む回避行動を駆使してヴァンパイアハンターや異形の怪物たちと戦います。霧と闇に包まれたロンドンの陰鬱な空気感や、科学とオカルトが混在する独特の世界観が、プレイヤーを逃げ場のない道徳的なジレンマへと引き込んでいきます。

開発元のDONTNOD Entertainmentは、フランスを拠点とするスタジオで、物語主導のゲーム開発に定評があります。本作の舞台となった1918年のパンデミックや、吸血鬼という存在の歴史的背景に興味を持った方は、スペイン風邪の記録や、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』などを読むことで、本作が描く「疫病と吸血鬼」のアナロジーをより深く理解することができます。

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)

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