『Ghost of Tsushima』は、燃え盛る対馬の地で「武士の誉れ」と「邪道な戦い」の狭間に揺れる一人の男の生き様を、息をのむほど美しい日本の原風景と共に描くオープンワールド時代劇アクションアドベンチャー。2020年7月17日にソニー・インタラクティブエンタテインメントからPlayStation 4で発売され、後にPlayStation 5版やPC版を含む完全版『Director’s Cut』へと展開された、世界中のゲーマーを侍の魂で震わせた傑作です。

舞台は1274年(文永11年)、モンゴル帝国(元)による日本侵攻「元寇」の最中にある対馬。プレイヤーは対馬の武士・境井仁(さかい じん)となり、圧倒的な兵力差を誇る元軍から故郷を取り戻すための孤独な戦いに身を投じます。本作の物語の核となるのは、仁が抱える強烈な葛藤です。幼い頃から叩き込まれた「正々堂々と戦う武士の道」では民を守れない現実に直面し、背後から敵を討ち、毒や火薬を使う「冥人(くろうど)」という非情な戦鬼へと堕ちていく苦悩が、重厚なドラマとして描かれます。

ゲームプレイにおける最大の特徴は、徹底して没入感を削がないように設計されたユーザーインターフェースです。画面上にミニマップや矢印は存在せず、目的地への道順は「吹く風」が木々やススキを揺らして教えてくれます。黄金に輝く銀杏の森、血に染まった彼岸花、雪深い静寂の山々など、四季折々の美しさが凝縮された対馬のオープンワールドは圧巻の一言。その中を愛馬と共に駆け抜け、キツネに導かれて稲荷の祠を巡り、温泉で疲れを癒やす探索要素は、殺伐とした戦いの中での一時の安らぎとなります。

戦闘システムは、一瞬の油断が死に直結する緊張感あふれる「チャンバラ」です。敵の攻撃を弾き、体勢を崩して一撃で斬り伏せる剣戟アクションは、黒澤明映画のような静と動の美学を体現しています。一方で、闇に紛れて敵拠点を壊滅させるステルスアクションも選択可能で、どちらの手段を取るかはプレイヤーの美学に委ねられています。さらに、画面をモノクロにし、ノイズを走らせて往年の時代劇映画の雰囲気を再現する「黒澤モード」を搭載するなど、日本の侍映画へのリスペクトが細部まで徹底されています。

『Ghost of Tsushima』は特定の原作を持たないオリジナル作品ですが、開発チームは黒澤明監督の映画『七人の侍』や『用心棒』などから多大な影響を受けたと公言しています。画面をモノクロにする「黒澤モード」の搭載や、時代劇特有の「間」を意識した演出は、往年の日本映画への深い敬意と愛の結晶といえるでしょう。

黒澤明 Blu-ray

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