『ミステリー P.I. ~消えたフィルム~』は、ニンテンドーeショップのロンチタイトルとして配信されながら、ニンテンドー3DSの立体視機能を完全に放棄したソフトウェアである。画面下部のタッチスクリーンに表示された乱雑な部屋のイラストから、指定されたリストのアイテムを探してタッチするという動作のみで進行する。新ハードの機能訴求が求められる市場環境において、旧ハードであるDSiウェアと同等の仕様のまま投入された事実は、当時の検証コミュニティにおいて「3DSで出す意味が欠落している」として記録された。

ソフトウェアのジャンル名には「アイテム探し推理ゲーム」と記載されているが、ゲーム内に推理要素は実装されていない。私立探偵が盗まれた映画フィルムを探すというテキストが用意されているものの、プレイヤーに要求されるのは「制限時間内に画面を凝視し、リスト化された日用品をタッチし続ける」という物理的な作業のみである。証拠品から犯人を導き出すような論理的思考のプロセスはシステムによって排除されており、ステージの合間に短いテキストが表示されるだけで、すぐ次のアイテム探しへと移行する。

さらに、アイテムの隠し方に関しても特異な判定基準が設定されている。証拠品として指定された物体がイラストとして配置されるのではなく、背景の壁や床に「文字」として直接書き込まれているステージが存在する。現場の証拠品を探すという設定のもとで、カモフラージュとして描かれた文字列をタッチして回収するという事象が平然と進行する。探偵業務のシミュレートではなく、理不尽な錯視画像からテキストを抽出する作業をエンディングまで要求される仕様により、事件解決の文脈は完全に崩壊している。

元々は海外のPC向けカジュアルゲーム『MYSTERY P.I.』シリーズであり、それを日本のモバイル向けに改編し、さらに3DSへ移植したという経緯を持つ。2010年代初頭のダウンロード市場では、既存のモバイルアプリやFlashゲームを体裁だけ整えて携帯ゲーム機へ横流しするビジネスモデルが多数確認されていた。同タイトルもその一つであり、「推理ゲーム」というパッケージングを施しながら、内部構造は単調な画面タップ作業の流用に留まっている。探偵という設定と、背景に同化した文字列をタッチするというゲームデザインの乖離は、当時のダウンロード専売ソフトにおける企画承認のハードルが極端に低かった事実を示す物質的な証拠である。

【ミステリー P.I. ~消えたフィルム~】

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