『Canvas3』は、美術部に所属する少年たちが一枚の絵に込める情熱と淡い恋心を瑞々しいタッチで綴る学園純愛アドベンチャー。2009年9月17日にGNソフトウェアからPlayStation 2で『白銀のポートレート』が発売され、2010年4月22日には新規ヒロインを加えて再構成されたPlayStation Portable版『七色の奇跡』が登場しました。

物語の舞台は、芸術への造詣が深い繚乱学園。美術部に所属する主人公・境井雅は、かつての情熱を失いかけながらも、冬の文化祭「撫子祭」に向けて一枚の絵を完成させようと奮闘します。本作は「冬」をテーマにしており、澄んだ空気の中で芽生えるヒロインたちとの絆や、学園に伝わる「赤い撫子」の伝説を巡る切なくも温かな物語が、叙情的な筆致で描かれます。

システム面では、伝統的なテキストアドベンチャー形式を採用しており、選択肢によって物語が多岐に分岐します。ヒロインたちはそれぞれ、絵を描くことへの葛藤や家族との問題など、心に秘めた「色」を持っており、彼女たちの想いに寄り添い、共にキャンバスを彩る過程が本作の醍醐味です。コンシューマー版への移植にあたっては、PC版では攻略不可能だったサブキャラクターの昇格や、既存シナリオの大幅な加筆修正が行われました。

特にPlayStation Portable版『七色の奇跡』では、完全新規ヒロインとして「千草和々(ちぐさ なな)」が追加されたほか、新エピソードや多数のイベントCG、新規オープニング曲が収録されるなど、シリーズ最高峰のボリュームを誇ります。UMDの容量を活かしたフルボイス(主人公を除く)による迫真の演技が、雪降る街の情景や、揺れ動く思春期の感情を臨場感たっぷりに再現しています。

また、たにはらなつき氏、宮坂みゆ氏ら実力派イラストレーター陣が手掛ける透明感溢れるキャラクターデザインは、作品の持つ繊細な空気感を見事に体現しています。静寂の中に響くピアノを中心としたBGMや、作品を象徴する主題歌が、一枚のポートレート(肖像画)を完成させるまでの長い冬の物語をドラマチックに彩り、多くのプレイヤーに深い余韻を残しました。

『Canvas3』は、2001年から続く恋愛アドベンチャーの金字塔「Canvas」シリーズの系譜に連なる作品です。美術部という伝統の設定を継承しつつ、世代交代した新たなキャラクターたちが紡ぐ「絵」を通じた自己実現と恋の物語は、シリーズの持つ純愛性をより洗練された形で現代に提示しました。

色褪せない、あの冬の肖像画に会いにいく