『薄桜鬼 〜新選組奇譚〜』は、2008年9月18日にアイディアファクトリー(オトメイト)より発売されたPlayStation 2用女性向け恋愛アドベンチャーゲームであり、後にアニメ化や舞台化など多岐にわたるメディアミックス展開が行われた人気シリーズの記念すべき第1作目です。プレイヤーは蘭学医の娘である雪村千鶴となり、連絡の途絶えた父を探すために訪れた京都で、血に飢えた異形の者と、それを斬り伏せる新選組の隊士たちに遭遇し、数奇な運命により彼らと屯所で共同生活を送ることになります。
本作では、史実に基づいた幕末の動乱を背景に、新選組が抱える「闇」の部分に独自のファンタジー要素が組み込まれています。人の理を超えた力を与える秘薬「変若水(おちみず)」と、それを服用することで変貌する吸血鬼のような存在「羅刹(らせつ)」の設定が物語の中核をなし、隊士たちが剣を振るう理由や、歴史の影で繰り広げられた人外の戦いがドラマチックに描かれています。
物語が進むにつれ、池田屋事件や禁門の変といった歴史的事件に関わりながら、主人公自身の出生の秘密や「鬼」と呼ばれる存在との因縁が明らかになります。選択肢によって好感度が変化し、土方歳三や沖田総司、斎藤一といった隊士たちとの個別ルートへと分岐していくことで、それぞれの信念や悲恋、そして命を賭した生き様を見届けることができます。
美麗なグラフィックと重厚なシナリオが高く評価されており、「乙女ゲーム」の枠を超えて多くのファンを魅了しました。単なる恋愛物語にとどまらず、滅びゆく武士たちの美学と、彼らに寄り添い共に歩む少女の覚悟を描いた、儚くも力強い和風ダークファンタジーが体験されます。
本作は、アイディアファクトリーの女性向けゲームブランド「オトメイト」から発売された完全オリジナルのゲーム作品です。本作を起点として、ファンディスクの発売やアニメ化、リメイク版『真改』の展開などが行われ、乙女ゲーム界における金字塔的なシリーズとして確立されたタイトルです。












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