『水夏A.S+ Eternal Name』は、蝉時雨が降り注ぐ夏の田舎町と、そこにやってきた移動遊園地を舞台に、儚くも美しい4つの物語を描く恋愛アドベンチャーゲーム。2007年08月30日にブロッコリーからPlayStation 2で発売されました。本作は、2001年にCircusから発売されたPCゲーム『水夏』をリメイクした『水夏A.S+』をベースに、コンシューマー向けにさらなる追加要素を施した決定版です。「記憶」や「約束」をテーマにした切ないシナリオはそのままに、新ヒロイン「小野崎・T・カオル」の登場や、キャスト・主題歌の一新が行われ、終わらない夏の物語が鮮やかに蘇ります。
物語はオムニバス形式に近い4つの章で構成されており、それぞれ異なる主人公とヒロインの視点で進行します。記憶喪失の少女、義理の妹、神社の娘、そして移動遊園地の看板娘といったヒロインたちとの交流を通じて、町に伝わる「水鏡」の伝承や、登場人物たちが抱える過去の傷跡が明らかになっていきます。プレイヤーはテキストを読み進め、選択肢を選ぶことで運命を分岐させますが、章ごとに独立した物語でありながら、全体を通して一つの大きな世界観を共有しており、全てのルートをクリアすることで物語の全貌と、タイトルの「Eternal Name」に込められた意味が解き明かされます。
七尾奈留氏をはじめとするCircus初期を支えたイラストレーター陣による、透明感あふれるキャラクターデザインと、夏の情景を切り取った美しい背景美術が、本作の世界観を決定づけています。PS2版では、新ヒロイン・カオル(CV:小清水亜美)のシナリオが追加されただけでなく、既存のヒロインたちにも新たなエピソードやCGが加筆されました。yozuca*氏らが歌う新規オープニングテーマも収録されており、PC版をプレイ済みのファンにとっても、新たな「水夏」の感動を味わえる作品として再構築されています。
原作を手掛けたCircusは、大ヒット作『D.C. 〜ダ・カーポ〜』シリーズで知られるブランドです。本作はその前身にあたる時期の作品であり、後のCircus作品に通じる「こそばゆい」学園描写と、ファンタジックで泣けるシナリオの原点が詰まっています。七尾奈留氏の繊細なアートワークや、2000年代初頭の美少女ゲームが持っていた独特の空気感に惹かれた方は、氏の画集や『D.C.』シリーズの関連書籍を手に取ることで、その系譜をより深く楽しむことができるでしょう。













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