『ラムネ 〜ガラスびんに映る海〜』は、海辺の田舎町を舞台に、当たり前すぎて気づかなかった「大切な日々」を瑞々しく描くノスタルジック恋愛アドベンチャー。2005年8月25日にインターチャネルからPlayStation 2で発売され、2004年7月30日に発売されたPC版『ラムネ』に新キャラクターや新規シナリオを追加した移植作として親しまれました。

物語の舞台は、青い海と空が広がる海岸沿いの小さな町。都会からこの町へと引っ越してきた主人公・友坂健次は、隣の家に住む幼馴染の近衛七海や、妹の鈴夏、夏の間だけ遊びに来る従姉のひかりらと共に、穏やかで賑やかな日々を過ごします。物語は幼少期の「過去パート」から始まり、当時の選択が数年後の「現在パート」におけるヒロインとの関係性に深く影響を及ぼす構成となっています。

本作の最大の特徴は、徹底して描かれる「何気ない日常の尊さ」です。特別な事件が起きるわけではなく、海辺でのヤドカリ探し、放課後の教室、蝉時雨が降り注ぐ神社といった普遍的な風景の中で、ヒロインたちとの心の距離が少しずつ変化していく過程が丁寧に綴られます。作品全体を包むセピア色の郷愁(ノスタルジー)と、タイトルにもある「ラムネ」の泡のように消えやすくも美しい一夏の記憶が、プレイヤーの心に深く訴えかけます。

PlayStation 2版では、PC版でサブキャラクターだった佐倉裕美が攻略ヒロインに昇格したほか、完全新キャラクターとして鮎川美空が登場。さらに全編フルボイス化が施され、キャラクターたちの感情の機微をより鮮明に体験できるようになりました。また、クリア後の特典として『野望2005』などのコミカルなサイドストーリーも充実しており、シリアスとユーモアの絶妙なバランスが、ねこねこソフト作品らしい独自の魅力を形作っています。

アニメ化や小説化といったメディアミックスも盛んに行われ、多くのファンに「忘れられない夏」を提供した本作。劇的な展開よりも、風の音や波の音を感じるような静かな感動を求めるプレイヤーに最適な一作であり、今なおノスタルジックな恋愛ゲームの金字塔として語り継がれています。

『ラムネ 〜ガラスびんに映る海〜』は、PCゲームブランド「ねこねこソフト」が2004年に発表した『ラムネ』を原作としています。同ブランドの代表作『みずいろ』の流れを汲みつつ、さらに抒情的な演出と日常描写を研ぎ澄ませた、ノスタルジック路線の集大成的なタイトルです。

ラムネ