『そして僕らは、…and he said』は、不慮の事故によりトンネル内に閉じ込められた少年たちが、極限状態の中で己の過去や秘められた感情と向き合うサスペンスフルなボーイズラブ・アドベンチャー。2005年6月30日にインターチャネルからPlayStation 2で発売され、PC向けに熱狂的な支持を得た重厚な人間ドラマをベースに、家庭用独自の演出や新規要素を盛り込んだ一作として登場しました。
物語は、高校の修学旅行に向かうバスが高速道路のトンネル内で崩落事故に巻き込まれるところから幕を開けます。奇跡的に生き残ったのは、性格も境遇も異なる7人の少年たちでした。出口を塞がれ、救助の目処も立たない暗闇の中で、飢えや疲労、そして拭いきれない不安が彼らの精神を蝕んでいきます。平時では隠されていた個々の傷跡や、歪んだ執着、そして他者への渇望が、逃げ場のない密室で剥き出しになっていく過程が克明に描かれます。
ゲームシステムは、テキストを読み進めながら提示される選択肢によって物語を分岐させるアドベンチャー形式を採用しています。単なる恋愛劇に留まらず、脱出を目指すサスペンスとしての緊張感が常に付きまといます。プレイヤーがどの少年と行動を共にし、どのような言葉をかけるかによって、彼らの生死や心の救済、そして築かれる関係性の形が劇的に変化するマルチエンディング方式が特徴です。
PlayStation 2版の大きな魅力は、実力派声優陣によるフルボイス化が施されている点です。野島健児、野島裕史、櫻井孝宏、福山潤といった豪華キャストが、追い詰められた少年たちの悲痛な叫びや繊細な感情の機微を熱演しています。音声が加わったことで、閉鎖空間特有の重苦しい空気感や、ふとした瞬間に生まれる情緒的なシーンの没入感がより一層高められています。
ビジュアル面においても、PC版で定評のあった退廃的で美しいグラフィックがPlayStation 2の画面に合わせて最適化されました。光の届かないトンネル内部の冷徹な描写と、キャラクターたちの鮮烈な存在感が対比され、視覚的にも「生」と「死」の境界線を感じさせる演出がなされています。過酷な運命の果てに、少年たちがどのような答えを見出すのか、その衝撃的な結末を自らの手で辿る重厚な一作に仕上げられています。
『そして僕らは、…and he said』は、ボーイズラブゲームブランド「Digan(ディガン)」が2002年に発表したPCソフト『そして僕らは、』を原作としています。閉鎖空間でのサバイバルという過激なシチュエーションと、少年たちの心理を深く掘り下げたシナリオは、当時のBLゲーム界において異色の存在感を放ちました。












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