『Clover Heart’s 〜looking for happiness〜』は、二組の双子を主役に据えた複雑な人間模様と家族の絆を描く対視点型恋愛アドベンチャー。2004年8月26日にインターチャネルからPlayStation 2で発売され、2003年にPC向けに登場したALcotのデビュー作に新規要素を大幅に加えた移植版として親しまれました。
物語の舞台は、海に面した坂の街にある大きな屋敷。南雲白兎(なぐも はくと)と南雲夷月(なぐも いつき)の双子兄弟は、外交官として多忙な父に代わり、ロシアからやってきたもう一組の双子姉妹、御子柴莉織(みこしば りお)と御子柴玲亜(みこしば れあ)を迎え入れ、奇妙な共同生活をスタートさせます。親同士の再婚話という極めて身近な動機から始まる物語は、次第に彼らが抱える過去のトラウマや、家族をバラバラにした衝撃の真実へと迫っていきます。
本作最大の特徴は、白兎と夷月という対照的な性格を持つ二人の主人公の視点を切り替えながら物語を体験する「対視点システム」にあります。同じ出来事であっても、白兎の視点では「穏やかで切ない純愛劇」として、夷月の視点では「殺伐とした心の葛藤と再生」として描かれるなど、捉え方が劇的に変化します。一方の視点だけでは見えてこなかった事実や相手の本心が、もう一方の視点を通じることで浮き彫りになる多角的な構造が、シナリオに深い奥行きを与えています。
PlayStation 2版独自の要素として、新ヒロイン「飛鳥凛(あすか りん)」の追加が挙げられます。PC版ではサブキャラクターだった彼女に専用のルートと新規描き下ろしCGが用意されたほか、既存のルートにも多数のエピソードが補完されました。また、全編フルボイス化に加え、キャラクターの立ち位置に合わせて左右のスピーカーから声が聞こえるパンニング処理など、家庭用ならではの音響演出も物語の没入感をより一層高めています。
ビジュアル面では、人気イラストレーターの仁村有志氏による透明感溢れる柔らかなタッチが、作品の持つ優しさとシリアスな展開の対比を美しく彩ります。タイトルの「Clover」が象徴する幸福の意味を問い直す重厚なシナリオは、単なる萌え要素に留まらず、血縁や絆といった普遍的なテーマに正面から向き合った人間ドラマに仕上げられています。
『Clover Heart’s 〜looking for happiness〜』は、美少女ゲームブランド「ALcot(アルコット)」が2003年に発表した処女作『Clover Heart’s』を原作としています。双子という設定を最大限に活かした物語構成と、高い完成度を誇る楽曲群により、当時のアドベンチャーゲーム界で非常に高い評価を獲得しました。













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