『五分後の世界』は、村上龍氏のベストセラー小説を原作とし、原作者自らの監修によって「もうひとつの日本」を描いたサウンドノベル。2001年08月02日にメディアファクトリーからPS2で発売されました。物語の舞台となるのは、私たちが暮らす現代日本から時間が「五分」だけずれてしまったパラレルワールドです。そこは、第二次世界大戦でポツダム宣言を受諾せず、無条件降伏を拒否した日本が、連合国軍との本土決戦を経て地下空間に潜伏し、半世紀以上にわたってゲリラ戦を継続しているという、極限のサバイバル世界でした。

ゲームプレイは、ジョギング中に突如としてこの異世界へ迷い込んでしまった会社員・小田桐をはじめとする複数の主人公の視点を通じて進行します。基本はテキストを読み進めるノベル形式ですが、本作独自のシステムとして「チェーンノベル」を採用しています。これは、ある主人公の行動が他の登場人物の運命に連鎖的に影響を与える仕組みであり、地下帝国「アンダーグラウンド」で生きる人々の群像劇を多角的に描き出します。また、緊迫した場面ではムービー中に画面をクリックして行動を決定する「ビュー・クリック・システム」が発動し、瞬時の判断が生死を分ける緊張感を演出しています。

本作の最大の特徴は、原作小説が持つ圧倒的な暴力性と、極限状態における人間の生命力を、実写映像と重厚なサウンドで再現している点です。国民学校で徹底的な戦闘教育を受けた「アンダーグラウンド」の住人たちと、平和ボケした現代日本人との対比が鮮烈に描かれ、プレイヤー自身のアイデンティティを揺さぶるような没入感を提供します。単なる文字のゲーム化に留まらず、村上龍氏が伝えたかった「危機感」と「覚悟」というテーマを、インタラクティブな体験として再構築した意欲作となっています。

原作となる村上龍氏の小説『五分後の世界』は、1994年に発表され、その衝撃的な設定と圧倒的な筆致で多くの読者を震撼させました。「もしもあの時、日本が降伏していなかったら」という歴史のifを描きつつ、現代社会が失った野生や生存本能を問いかける内容は、色褪せることのない普遍的なテーマを含んでいます。ゲームでその深淵に触れた後は、続編小説である『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II』とあわせて読むことで、この壮絶な世界観の全貌を知ることができます。

五分後の世界 (幻冬舎文庫)

駿河屋あんしん&らくらく買取