『北方謙三 三国志』は、ハードボイルド小説の巨匠・北方謙三氏による歴史大作を、重厚な語りとビジュアルで再構築したデジタルノベル。2001年06月14日にメディアファクトリーからプレイステーション2で発売されました。本作の基盤となっているのは、TBSラジオで放送された全253話にも及ぶラジオドラマです。英雄たちの群像劇として描かれることの多い三国志において、個々の人間が抱える孤独や情熱に焦点を当てた北方版独自の「個の物語」を、DVD-ROM2枚組という大容量メディアを用いて完全収録しています。

ゲームプレイは、画面に表示されるテキストを読み進めるだけでなく、総再生時間40時間を超えるフルボイスの朗読劇を「聴く」ことに主眼が置かれています。ナレーションには俳優の渡辺謙氏を起用し、その渋く力強い語り口が物語の緊張感を極限まで高めます。プレイヤーは単に物語を追うだけでなく、作中に登場する難解な語句や地名、人物関係をその場で参照できるデータベース機能を活用しながら、複雑に絡み合う乱世のドラマを深く理解していくことができます。途中セーブにあたる「しおり」機能も搭載しており、長大な物語を自分のペースで読み進めることが可能です。

本作の最大の特徴は、寺田克也氏によるキャラクターデザインと、従来の三国志像を覆す大胆な解釈です。例えば、豪傑・張飛は単なる乱暴者ではなく、義兄である劉備の「徳」を守るためにあえて汚れ役を演じる繊細な人物として描かれ、最強の武人・呂布は圧倒的な武力ゆえの孤独に苛まれる男として描写されます。ゲーム的なインタラクティブ性は低いものの、アナログな「物語の力」をデジタル技術で保存し、極上のオーディオブックとして昇華させた、大人のためのエンターテインメント作品となっています。

本作の原作である小説『三国志』(ハルキ文庫刊)は、吉川英治版や横山光輝版とは異なる、リアリズムとハードボイルド精神に貫かれた傑作です。ゲーム内でその熱気に触れた後は、実際に活字で全巻を読破することで、北方謙三氏が描こうとした「男の美学」の真髄により深く触れることができます。

三国志 (ハルキ文庫)

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