『最強 東大将棋』シリーズは、東京大学の学生らによって開発され、世界コンピュータ将棋選手権で優勝した強力な思考エンジンを搭載する本格将棋シミュレーション。1998年12月3日に毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ出版)からPlayStationで第1作が発売され、1999年11月18日には思考ルーチンと機能を強化した続編『最強 東大将棋2』が登場しました。
本作の核心となる思考エンジン「IS将棋(Information Science Shogi)」は、当時東京大学の大学院生であった棚瀬寧氏らを中心としたチームによって開発されました。1998年の第8回世界コンピュータ将棋選手権において、並み居る強豪ソフトを抑えて初出場で初優勝を飾ったことで大きな話題を呼び、その圧倒的な演算能力をPlayStationのハードウェアに合わせて最適化したものが本作です。水平線効果を排除した緻密な読みにより、当時の家庭用ソフトとしては最高峰の棋力を誇りました。
ゲーム内には、コンピュータと自由に対局を行う「対局」モードのほか、昇級・昇段を目指して個性豊かな対局相手と戦う「道場破り」モードが搭載されています。道場破りでは自身の戦績が記録され、実力に応じた段級位が認定されるため、一人でも目標を持ってプレイを継続できる仕組みです。また、コンピュータ側が1手につき最大でも1分以内に着手するという思考速度の速さも特徴であり、快適な対局テンポを実現しています。
学習機能や補助機能も充実しており、全162題の「詰将棋」や、序盤・終盤それぞれの「次の一手」問題を解くことで実戦的な筋を学べる「棋力認定」モードを収録。さらに、盤面を表示せずに頭の中だけで対局を進める「目隠し対局」や、大学将棋の対局を鑑賞できる「棋譜鑑賞」といった、熱心な将棋ファンを満足させる硬派なコンテンツが網羅されています。
対局中のインターフェースは情報の視認性を重視した構成となっており、形勢の有利・不利を数値化して表示する機能や、コンピュータが推奨する一手を提示するヒント機能も備えています。家庭用ゲーム機におけるコンピュータ将棋のレベルを一気に引き上げた記念碑的なタイトルであり、後に『最強 東大将棋3』以降のPlayStation 2版や『激指』シリーズへと続く、本格将棋ソフトの進化の礎を築きました。
『最強 東大将棋』シリーズは、東京大学の学生や研究有志によって開発された将棋プログラムを原点としています。コンピュータがプロ棋士の思考に肉薄し始めた時期を象徴する作品であり、高い演算能力を一般の将棋ファンへ開放する実務的なツールとして高く評価されました。












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