『餓狼伝説 WILD AMBITION』は、1999年1月28日にハイパーネオジオ64で稼働を開始し、同年6月24日にPlayStationへ移植された、シリーズ初の本格3D対戦格闘ゲームです。従来の2Dドット絵からポリゴン表現へと大きく舵を切った意欲作でありながら、操作性やゲーム性は『リアルバウト餓狼伝説』シリーズの流れを汲んでおり、2D格闘の手触りを3D空間で再現するという挑戦的な設計がなされています。

物語は、初代『餓狼伝説』のリメイク的な位置づけで、ギース・ハワードに父を殺されたテリー・ボガードが復讐のために格闘大会へ挑むという王道の復讐劇が展開されます。ただし、時系列や設定には大胆なアレンジが加えられており、本来『餓狼伝説2』以降で登場する不知火舞やキム・カッファン、山崎竜二なども参戦しているほか、世界各地を舞台にした大会形式へとスケールアップしています。

ゲームシステムは、ライン移動を廃止し、Dボタンによる軸移動(サイドステップ)を導入。これにより、3D空間を活かした立体的な攻防が可能となりました。また、攻撃を当てることで増加し、被弾で減少する「ヒートゲージ」が導入されており、満タン時には「オーバードライブパワー」や「ヒートブロウ」といった強力な技が使用可能になります。ゲージが空になると気絶するというリスクもあり、攻防の駆け引きがよりスリリングなものとなっています。

登場キャラクターは、テリー、アンディ、ジョー、不知火舞、キム、ビリー、山崎、ライデンといったおなじみの面々に加え、オリジナルキャラクターとして女子高生レスラーの千堂つぐみや、合気柔術の達人・坂田冬次が登場。さらに、PS版ではダック・キングとMr.カラテが追加され、隠しキャラとしてギース・ハワードや李香緋も使用可能です。キャラクターイラストはヒロアキ氏が担当し、当時のSNK作品の中でも特にスタイリッシュなビジュアルが印象的でした。

一方で、ポリゴン表現の粗さや操作性の違和感、演出の簡素さなどから、シリーズファンの間では評価が分かれる作品でもあります。とくに、2D格闘に慣れたプレイヤーにとっては、3D化による操作感の変化が大きな壁となったことも否めません。それでも、SNKが3D格闘に挑戦した数少ないタイトルとして、また『餓狼伝説』の原点を再解釈した作品として、今なお語り継がれる存在です。