『ザ・ゲームメーカー 売れ売れ100万本げっとだぜ!』は、クリエイターの情熱と現場の悲哀をコミカルなタッチで描き、ミリオンセラーを目指して奔走するゲーム会社経営シミュレーション。1998年9月23日にアクセラからPlayStationで発売され、ゲーム業界の内幕をパロディ満載でシミュレートした異色作として展開されました。

本作のプレイヤーは、弱小ゲームメーカーのディレクターとなり、個性癖のあるスタッフたちを指揮してゲーム開発を行います。最大の特徴は、企画立案からマスターアップまでの工程を「仕様書カードをスタッフに配る」というアナログな作業で表現している点です。プログラマーやグラフィックデザイナーといった職種の異なるスタッフに対し、それぞれの得意分野や作業負荷を考慮しながらカードを分配し、締め切りまでにクオリティを高めていく現場管理能力が問われます。

開発スタッフには「作業は早いがバグが多い」「能力は高いがサボり癖がある」といった人間味あふれるパラメーターが設定されており、彼らのモチベーション管理も重要な仕事となります。栄養ドリンクを差し入れたり、時には恋愛相談に乗ったりと、人間関係のケアがおろそかになると開発がストップしてしまうことも。また、完成したゲームは実在のゲーム誌『週刊ファミ通』を模した雑誌でクロスレビューを受け、その評価が売上に直結するというシビアながらもリアルな業界の縮図が描かれています。

制作できるゲームジャンルはRPGやアクションだけでなく、「ギャル麻雀」や「育成SLG」など多岐にわたり、中には自社(アクセラ)タイトルのパロディも含まれています。単なる経営シミュレーションに留まらず、89種類もの架空タイトルを作り分けるコレクション要素や、業界あるあるネタを散りばめたテキストが、当時のゲーマーたちの苦笑いと共感を誘いました。

『ザ・ゲームメーカー』は特定の原作を持ちませんが、題材となっているのは1990年代後半の日本のコンシューマーゲーム業界そのものです。ミリオンヒットが続出し、「ゲームクリエイター」が憧れの職業として注目される一方で、過酷な労働環境が常態化していた当時の熱狂とカオスを体験できる作品です。

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