1998年、バンダイがPlayStation向けに発売した『スピンテイル』は、テレビの中の異世界を舞台に、トカゲ型ヒーロー「レノ」が活躍する3Dアクションゲームです。原作はアメリカのCrystal Dynamics社が手がけた『Gex: Enter the Gecko』であり、日本版では大胆なローカライズが施され、主人公の名前や設定が変更されました。原作のユーモアとパロディ精神を受け継ぎながらも、独自の世界観を築いた本作は、当時の3Dアクションの潮流に乗りつつ、個性を放つ作品として登場しました。
プレイヤーは、テレビ番組の世界に入り込んだレノを操作し、ホラー映画、SF、カートゥーンなどジャンルごとに異なるステージを探索します。各ステージには複数のリモコンが隠されており、それを集めることで新たな番組世界が解放されていきます。壁に貼り付く、尻尾で攻撃する、ジャンプで障害物を越えるなど、レノのアクションは多彩で、ステージごとのギミックと組み合わさることで探索の奥深さが際立ちます。ステージ構成は『スーパーマリオ64』や『バンジョーとカズーイの大冒険』に近く、箱庭的な自由度と収集要素がプレイヤーの好奇心を刺激します。
本作の魅力は、何よりもその世界観のユニークさにあります。テレビの中という設定を活かし、各ステージはジャンルのパロディに満ちており、背景や敵キャラクター、BGMまでもがその雰囲気を巧みに演出しています。原作の「ゲックス」が持つ皮肉とユーモアのセンスは、日本版でも随所に残されており、ローカライズによる改変がありながらも、その本質的な魅力はしっかりと受け継がれています。ただし、操作性やカメラワークには難があり、壁貼りつきアクションでは視界の急変に戸惑う場面も多く、3D酔いしやすいプレイヤーには注意が必要です。
PlayStation専用タイトルとして登場した本作は、当時のハード性能を活かした立体的なステージ構成と、ジャンルごとのBGM演出が印象的です。ローカライズに伴う演出の簡略化や文字表現の改変など、惜しい部分も見受けられますが、テレビの中を旅するというコンセプトは今なお新鮮で、探索型アクションの魅力を存分に味わえる作品となっています。
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