『RUNABOUT(ランナバウト)』は、交通ルールという概念をかなぐり捨て、街中のあらゆる障害物を粉砕しながら目的地を目指す、史上最も自由で破壊的なドライブアクション。1997年5月23日にやのまんからPlayStationで発売され、パズルメーカーとしてのイメージが強かった同社が放つ、開発・クライマックス(内藤寛氏率いるチーム)による「暴走アクション」の金字塔として世に送り出されました。
本作のプレイヤーは、非合法の「運び屋」として依頼を遂行します。一般的なレースゲームと決定的に異なるのは、「コースが存在しない」という点です。スタートとゴール(または目的物)だけが設定されており、そこへ至るルートは完全にプレイヤーの裁量に委ねられています。舗装道路を走るもよし、デパートのガラスを突き破って店内を突っ切るもよし、地下鉄の線路を爆走するもよし。最短ルートを開拓するためなら、街路樹や看板、果ては建物の一部さえも破壊して突き進むことが推奨される、背徳感と爽快感が同居したシステムが最大の特徴です。
登場する車種も、このゲームの混沌とした世界観を象徴しています。高性能なスポーツカーだけでなく、路線バス、原付バイク(ベスパ風)、清掃車、ダンプカー、果ては戦車まで選択可能です。バスで細い路地を塞ぎながら走ったり、戦車で対向車を踏み潰したりといった、現実では絶対に許されない「働く車の暴走」を楽しむことができます。それぞれの車両には細かな挙動設定が施されており、ネタ枠に見える車両でも使いこなせば驚異的なショートカットを実現できる奥深さがあります。
BGMには、日本のサーフロックバンド「ザ・サーフコースターズ」を起用。テケテケという独特のギターサウンドが、荒唐無稽なカーチェイスをクールかつスピーディーに演出しています。単なる「バカゲー」に留まらず、物理演算を意識した車の挙動や、コンマ1秒を削るためのルート構築(パズル要素)など、コアなゲーマーを唸らせる完成度を誇り、後にシリーズ化されるほどのカルト的な人気を獲得しました。
『RUNABOUT』は特定の原作を持ちませんが、映画『ブルース・ブラザース』や『ミニミニ大作戦』などで見られる「街中でのド派手なカーチェイス」へのオマージュとリスペクトに溢れています。ミニカーで遊んでいた子供の頃の「もしもこの車でここを走ったら?」という空想を、大人の技術で具現化した作品といえるでしょう。













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