『鈍色の攻防 32人の戦車長』は、架空の1930年代を舞台に、亡国の戦車部隊を率いて戦うドラマチック戦車戦シミュレーション。1997年2月28日にシャングリ・ラからPlayStationで発売されました。

本作は、後に硬派戦車シミュレーターの金字塔『パンツァーフロント』を生み出すことになるメーカー「シャングリ・ラ」の初期作品であり、その原型とも言えるタイトルです。物語は、ユーロディエール共和国で発生した軍事クーデターにより、女王が国を追われるところから始まります。プレイヤーは、女王を守護する唯一の戦力となった「実験戦車小隊」の中隊長となり、世界各地を転戦しながら共和国の奪還を目指します。

最大の特徴は、タイトルにもある「32人の戦車長」たちの存在です。部隊に配属される部下たちは、単なるユニットではありません。「お調子者のチンピラ」「乳製品にこだわる遊牧民」「オカマ口調の荒くれ者」「眼帯のシスター」など、戦争映画の脇役全員集合といった趣の強烈な個性が与えられています。戦闘中、彼らはプレイヤーの指示に対してリアルタイムで応答し、悲鳴を上げ、軽口を叩き、時には「クソ! 俺のケツを舐めろ!」といったスラング混じりの迷言を吐き捨てます。声優の演技は決してプロフェッショナルとは言えませんが、その素人っぽさが逆に「徴集されたばかりの兵士たちの生々しさ」を醸し出しており、独特の臨場感を生んでいます。

システム面では、L1/R1ボタンで左右のキャタピラを独立制御する操作系を採用しており、旋回や超信地旋回といった戦車特有の挙動を再現しています。登場する戦車は、実在の車両をモデルにしつつも架空の名称が与えられており(例:T-34似の戦車など)、兵器マニアのツボを押さえたラインナップとなっています。シナリオは戦果によって分岐し、どの戦車長を使い、誰を生き残らせるかによって物語の展開が変わるマルチストーリー形式です。泥臭く、鉄と油の匂いが漂う戦場で、頼りなくも愛すべき部下たちと共に生き残る、男たちの(一部女性もいますが)ロードムービー的な魅力に溢れた一作です。

本作はオリジナル作品ですが、開発元のシャングリ・ラは、徹底したリアリズムで戦車ファンの度肝を抜いた『パンツァーフロント』シリーズの開発で知られるメーカーです。本作『鈍色の攻防』は、そのシミュレーター的な挙動制御の萌芽が見られる一方で、キャラクター性やストーリー性を重視した「戦記物」としてのアプローチが強く、両作を比較することで開発チームの進化の過程を垣間見ることができます。

書籍『宮崎駿の雑想ノート 泥まみれの虎』
※「極限状態の戦車戦」と「人間臭い乗員たち」というテーマにおいて、本作の世界観と深く共鳴する名作戦記漫画です。

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