『すらいムしよう!』は、増殖と変異を繰り返す不思議な生物「スライム」を観察・育成するシミュレーションゲーム。1996年10月4日に東北新社からPlayStationで発売されました。

タイトルロゴの「ム」だけがカタカナ表記という奇妙なセンスが光る本作ですが、その中身はさらに独創的です。プレイヤーはスライムの飼い主となり、エサを与えたり、環境を調整したりしながら彼らの生活を見守ります。スライムたちは自律的に動き回り、分裂して増えたり、他の個体と融合して巨大化したり、あるいは環境に適応して奇妙な姿へと「変態」したりします。ただ可愛いだけではなく、生存競争に敗れて消滅する個体もいるなど、デジタルな水槽の中で繰り広げられる小さな命のドラマは意外なほどシビアで哲学的です。

特筆すべきは、当時のゲームとしては破格の豪華スタッフ陣です。キャラクターデザインおよび世界観設定には、『攻殻機動隊』で知られる**士郎正宗**氏を起用。パッケージに描かれたサイバーかつ有機的な美女やメカニカルな意匠は、一見するとスライム育成ゲームとは思えないハードな雰囲気を漂わせています。さらに、音楽はムーンライダーズの**岡田徹**氏が担当しており、テクノポップ調の軽快かつ不思議なBGMが、無機質な実験室のようなゲーム画面に彩りを添えています。

また、本作を語る上で避けて通れないのが、**「メモリーカードの消費量が異常に多い」**という点です。スライムたちの個体データを保存するためか、セーブには最低でも6ブロック、最大で15ブロック(メモリーカード1枚丸ごと)を使用するという仕様でした。このため、プレイヤーは本作専用のメモリーカードを用意することを余儀なくされましたが、それでも自分だけのスライム生態系を作り上げることに没頭するマニアを生み出しました。映像制作会社である東北新社が手掛けた、実験精神あふれる野心作です。

本作のビジュアルイメージを手掛けた士郎正宗氏は、『アップルシード』や『攻殻機動隊』などで世界的に知られる漫画家・イラストレーターです。本作『すらいムしよう!』においても、有機物と無機物が融合したような独特のデザインセンスが発揮されており、単なる可愛い育成ゲームとは一線を画すSF的な世界観の構築に貢献しています。

士郎正宗 画集・関連書籍
※本作のような「サイバーかつ有機的」なビジュアルの源泉を知るには、氏の画集やコミック作品に触れるのが一番です。

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