『赤い糸 DS』およびその続編である『赤い糸 destiny DS』は、延べ3600万人という驚異的なアクセス数を記録した同名のケータイ小説を原作とする恋愛アドベンチャー。主人公・竹宮芽衣の中学時代から高校卒業までの波乱に満ちた軌跡を、2本のパッケージに分けて克明に描き出す。幼馴染の悠哉への淡い想い、影のあるアッくんとのすれ違い、そして一途なタカチャンとの出会い。単なる甘い青春劇にとどまらず、薬物や暴力、家族の確執といった過酷な現実が容赦なく少女たちに牙を剥く、痛みを伴う群像劇が展開される。
プレイスタイルにおいて特筆すべきは、ニンテンドーDS本体を縦に構える「縦持ち」のインターフェース。画面を縦長に使うことで、当時の女子中高生たちが折りたたみ式の携帯電話で小説をスクロールしていた「ケータイ小説を読む」という身体的感覚をゲーム機上で完全に再現している。物語はテキストを読み進める途中に現れる選択肢によって分岐していくノベルゲームの基本構造を踏襲。芽衣以外の主要人物には実力派声優陣によるフルボイスが当てられており、文字の行間から溢れ出す感情の揺らぎや吐息が、より生々しく耳元へ響き渡る。
最大の焦点は、原作や映像作品の枠を超えたゲームオリジナルの展開。運命に翻弄され続けた芽衣たちが辿り着く、原作小説とも実写ドラマとも異なる複数のオリジナルエンディングが用意されている。理不尽な暴力や大人たちの都合に傷つけられながらも、見えない「赤い糸」の存在を信じ抜こうともがく少女たち。与えられた悲劇的な結末をただなぞるのではなく、自らの手で選択肢を選び取り、血の通った青春の別ルートを紐解いていく。読書という受け身の体験を、プレイヤー自身の痛切なインタラクションへと昇華させたノベル体験。
『赤い糸』は、2006年に「魔法のiらんど」で連載が開始され、延べ3600万人という驚異的なアクセス数を記録したケータイ小説の金字塔。原作のキャッチフレーズが示す通り、薬物依存、自殺といったショッキングな題材を中高生の視点から描き出し、当時の若者たちの間に強烈な共感と巨大な社会現象を巻き起こした。2008年には南沢奈央と溝端淳平の主演により、連続テレビドラマと劇場版映画が同時期に連動して展開される異例のプロジェクトへと発展。携帯電話の小さな画面から生まれた物語が、出版、映像、ゲームという多メディアを席巻し、2000年代の日本のポップカルチャーを象徴するムーブメントを形成した。













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