『みてはいけない』は、日常の何気ない風景に潜む異界の住人をあぶり出すホラーアドベンチャー。プレイヤーは心霊写真に写り込んだ霊を制限時間内に探し出し、タッチペンで直接塗りつぶして除霊を行う。除霊の成否は、主人公とその家族が住む「ノロイの家」で巻き起こる怪奇現象と密接にリンク。写真の謎を解き明かすたびに、平穏だったはずの我が家が少しずつ狂気に蝕まれていくという、二つのモードが交錯する構成で進行していく。

最大の壁となるのは、プレイヤーの精神を別の意味で極限まで追い詰める除霊システム。心霊を塗りつぶす際の判定が異常なまでに厳しく、霊の輪郭からわずかでもペンがはみ出したり、塗り残しがあったりすると即座に失敗の烙印を押される。画面右下の蝋燭が溶け切る前に正確な作業を要求されるプレッシャーに加え、一度でも失敗すると「ちーん」という間の抜けた効果音と共に強制的に次の写真へ移行。再挑戦は一切許されず、しかも失敗した瞬間にオートセーブが作動するため、電源を切ってやり直すというゲーマーの最終手段すら無慈悲に封じられている。

理不尽な仕様によって積み上げられた絶望は、アドベンチャーパートの異様な手触りへと直結する。除霊に失敗し続けるとノロイの家での怪奇現象は悪化し、家族は次々と凄惨な末路を辿る。しかし、どれほど残酷な死を遂げても「実は夢だった」という強引な展開で何度も日常に引き戻されるため、死の恐怖そのものがゲシュタルト崩壊を起こしていく。あからさまな画像加工と分かるチープな心霊写真の数々と、たった一度の操作ミスで真の結末への道が完全に閉ざされる冷酷なプログラム。怪談の恐ろしさではなく、ゲームの構造そのものがプレイヤーに牙を剥く、特異な恐怖体験がそこにある。

『みてはいけない』というタイトルが示す通り、本作は「触れてはならない領域」に踏み込んでしまったプレイヤーに対する罰ゲームのような存在感を放つ。2000年代後半のニンテンドーDS市場は、タッチペンという直感的なインターフェースを活かしたホラーゲームの粗製濫造期にあった。その中でも本作は、発売前のプロモーションでセクシー女優の夏目ナナをイメージキャラクターに起用するなど、ゲーム内容とは無関係な方向で話題作りを展開。いざ蓋を開けてみれば、公式ホームページで予告されていた恐怖演出すら「倫理上の問題」を理由に大幅に削ぎ落とされており、風呂場にただ髪の毛が浮いているだけといったシュールな光景に終始する。

恐怖を煽るはずの心霊写真は、あまりにも露骨な画像編集の跡が見て取れるため、次第に「間違い探し」や「シュールなギャグ」の領域へと変貌を遂げる。しかし、そのチープなビジュアルとは裏腹に、プレイヤーに要求される操作精度はミリ単位の職人芸。この絶妙なアンバランスさが、結果として「意図しない狂気」を生み出した。ホラーとしての純粋な恐怖ではなく、「セーブデータを消去して最初から100枚の写真を擦り直す」という果てしない徒労のループが、真の呪いとしてプレイヤーの心に深い傷を刻み込む。心霊写真の恐ろしさを安全な場所から楽しみたいのであれば、映像メディアの定番に回帰するのが最も賢明な選択肢と言える。

ほんとにあった! 呪いのビデオ

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