『DEMENTIUM 閉鎖病棟』は、異形の怪物が徘徊する廃病院からの脱出を一人称視点で描くサバイバルホラー。2008年6月26日にインターチャネルからニンテンドーDSで発売され、後にグラフィックの向上やシステム改善を施したリマスター版がニンテンドー3DSやNintendo Switchなどで展開されました。

プレイヤーは記憶を失った男ウィリアム・レッドムーアとなり、血痕や不気味なメッセージが残された「レッドムーア病院」を探索します。薄暗い廊下を懐中電灯で照らし、行く手を阻むクリーチャーを撃退しながら、自身の過去と病院に隠された謎を解き明かす構成です。全16のチャプターを通して、悪夢のような世界観が緻密に描かれます。

ゲームプレイにおける最大の特徴は、懐中電灯と武器を同時に使用できないシステムにあります。周囲を照らすためには灯りが必要ですが、攻撃を行う際は武器に持ち替えなければならず、視界を確保するか自衛手段を取るかというリアルタイムの取捨選択が常に要求されます。暗闇の中から音だけが聞こえてくる状況下での武器切り替えが、独特の緊迫感を生み出す仕組みです。

ニンテンドーDSの機能を活かした要素として、下画面のタッチパネルをメモ帳として使用できる機能が搭載されています。ステージ各所で見つかるヒントや地図の補足情報を直接ペンで書き込めるため、アナログな感覚での謎解きが可能です。また、当時の携帯機としては珍しい秒間60フレームの滑らかな描写や、左右の音の定位を強調した3Dサウンドにより、閉塞感のある現場の空気感が表現されています。

『DEMENTIUM 閉鎖病棟』は、アメリカのRenegade Kidが開発したオリジナル作品であり、海外では『Dementium: The Ward』として発売されました。ニンテンドーDSで本格的なFPSホラーを実現したシリーズの原点となるタイトルです。

DEMENTIUM 閉鎖病棟