『くるりんドーナツ お菓子なレシピ』は、甘い香りが漂う不思議なお菓子の世界を舞台にした横スクロールアクション。ある日、イタズラ好きな7匹の「クッキーベア」たちが、世界をおいしく保つための「虹色のお砂糖」を盗み出してしまう。お砂糖を失い、苦くて不味い姿に変えられてしまったお友達を救うため、主人公のドーナツが単身でクッキーベアたちを追いかける冒険へと出発する。
ゲームの進行は、主人公のドーナツを転がしてステージのゴールを目指すというもの。攻略の鍵となるのは、道中で手に入るトッピングの切り替え。スピードに優れた「チョコシュー」、壁をよじ登れる「ジャムシュー」、硬いブロックを粉砕する「ナッツシュー」という3つの能力を状況に応じて使い分け、行く手を阻むギミックを突破していく。アクションの基本的な骨格に、お菓子の特性を活かした能力変化が組み込まれている。
しかし、その道程は決して甘くない。本作最大の壁となるのが、すべてをタッチペンで行使する特異な操作システム。画面をスライドさせてドーナツを転がすという直感的なインターフェースを採用しているものの、プレイヤーの入力に対するキャラクターの挙動が極めて不安定。思い通りに止まることも進むこともままならない不条理な物理法則が、可愛らしいビジュアルとは裏腹の理不尽な難易度を生み出している。お菓子の世界を取り戻す戦いは、いつしかタッチペンのスライドという己の指先との過酷な格闘へと変貌を遂げる。
本作のもう一つの柱であり、「アクションレシピ」という独自のジャンル名を成立させているのが、ゲームと現実をリンクさせたレシピ収集機能。過酷なステージを見事クリアすると、ゲーム内に登場したキャラクターたちをモチーフにしたお菓子のレシピが手に入る。
特筆すべきは、そのレシピの本格度。愛知県にある「中部コンピュータ・パティシエ・保育専門学校」との正式なタイアップによって考案・監修されており、洋菓子から和菓子まで50種類以上にも及ぶ本格的なオリジナルレシピが収録されている。理不尽な操作性に耐え抜き、指先をすり減らしたプレイヤーへの報酬が、「現実のキッチンで使えるプロ監修のスイーツ製法」という圧倒的な実用性。デジタル空間での苛烈なアクションと、現実世界での優雅なお菓子作り。この二つの極端な体験を一本のソフトに同居させたアンバランスさが、本作を唯一無二の異端児たらしめている。













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