『LOVE♥ハムスター』は、ニンテンドーDSの音声認識機能を動物の飼育ゲームに強制適用した結果、ペットコミュニケーションの概念を歪めたソフトウェアである。ゲームの進行は、ハムスターにタッチペンで触れる、おもちゃを与えるといった一般的な世話に加えて、「DSのマイクに向かって言葉を教え込む」という作業が主軸となっている。プレイヤーがマイクに単語を吹き込み続けると、3Dモデリングでリアルに描かれたハムスターが「おはよう」「こんにちは」と人間の言葉を音声で復唱し始めるという仕様が実装されている。
ゲーム内に登場するハムスターの性格設定においても、動物としての生態観察という側面は放棄されている。「ゴールデン」や「ジャンガリアン」といった6種類の実在する品種が用意されているが、その中身は「涙もろく、おじいちゃん言葉を話す(パンダ)」「冗談が好きなグルメ家(チャイニーズ)」といった極端に擬人化されたパラメータが割り当てられている。リアルな外見の齧歯類がおじいちゃん言葉で人間の言葉を喋り返してくるという特異な設定に対し、純粋な動物ゲームを期待して購入したプレイヤー層からは「違和感がある」「幼児向けですぐに飽きる」という具体的な不満点が当時のレビューで報告された。
プレイ中の操作も、ハムスターの愛らしい仕草を観察するのではなく、「機械の音声認識を成功させるために、静かな部屋でDSのマイクに向かって何度も同じ単語を発声し続ける」という物理的な制約に縛られる。音声入力への応答パターンも対象年齢である幼児向けに単純化されており、ゲームとしての拡張性は存在しない。動物の飼育という題材を、マイク機能のデモンストレーションへと落とし込んだ事実が、エンディングのない単調な作業として提示される。
開発元のデジタルキッズは、ゲームボーイ時代の『ハムスターパラダイス』シリーズを手掛けた実績を持つ企業である。しかし、DSというハードウェアへ移行した際、「マイク入力」というギミックを企画の主軸に据えた結果、従来の「動物を観察する」という文脈から逸脱した。動物愛好家が求めたリアリティよりも、ハードウェアの新機能アピールが優先された事実が、「おじいちゃん言葉で喋りかけてくる3Dのハムスター」という怪異を生み出すに至った。当時のDS市場で頻発した「搭載機能の全使用を前提とした企画」が、ゲーム内の世界観を破壊したまま流通していた状態を記録する物質的な証拠である。













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