Article 2026/3/29
【3DS】ぼくらの七日間戦争 ~友情アドベンチャー~
game-list
『ぼくらの七日間戦争 ~友情アドベンチャー~』は、宗田理によるベストセラー小説をニンテンドー3DSのダウンロード専売ソフトとしてゲーム化したものである。中学生たちが廃工場に立てこもり大人たちに反旗を翻すという社会的なテーマを扱いながら、プレイヤーに要求されるのは「目玉焼きへの味付けと焼き加減を制限時間内にコントロールする」「タッチペンでマンホールを連打する」といった唐突で無機質なミニゲームの反復である。物語の緊迫感は、これらの脈絡のない調理や連打の作業によってシステム側から物理的に切断される。
当時のレビューや検証コミュニティで具体的な不満点として記録されたのは、時代背景の歪なアレンジと作中の描写である。1980年代に発表された原作をベースにしながら、「スマートフォン」といった現代の道具を登場させた結果、物語内のテクノロジー水準が矛盾を起こしている。また、一部の大人が当時の学生運動を美化するような政治的描写がテキストとしてそのまま出力されており、現代の子供向けレーティング(CERO:A)のゲームにおいて、ターゲット層の理解を置き去りにした思想が画面上に展開される事実が確認されている。
さらに、ノベルゲームとしての快適性をシステム側から阻害する仕様として、セーブデータの枠の少なさが指摘されている。ゲーム内には選択肢によって結末が変化するマルチエンディング仕様が採用されていながら、セーブデータを記録できる箇所が全編を通して「3箇所」しか存在しない。プレイヤーは限られたセーブ枠をやり繰りしながら分岐を回収し、その過程で中途半端な目玉焼きの調理作業を何度も処理し続けるという労働環境に置かれる。
ニンテンドー3DSのダウンロード市場では、過去の有名IPやベストセラー小説の体裁を借りた低価格アドベンチャーゲームが多数配信されていた。発売元のディースリー・パブリッシャーは『SIMPLEシリーズ』などで安価なタイトルを量産するノウハウを持っており、該当ソフトウェアもそのビジネスモデルの延長線上で企画されたものである。
しかし、名作小説の追体験という目的に対し、開発コストの制約から「とりあえずタッチペンを使わせる」という安易なミニゲームを挿入した結果、反体制の物語と目玉焼きの調理というシュールレアリスムを生み出した。当時の電子書籍市場への対抗策として「ゲームならではの要素」を強引に組み込んだ結果、ノベルゲームとしての快適さを損なったまま配信データとして出力された時代の記録である。