Article 2026/3/25
【DS】ディズニー・フレンズ
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『ディズニー・フレンズ』は、任天堂の『nintendogs』が確立したタッチペンによるコミュニケーションゲームの構造に、ディズニーのキャラクターを強制的に当てはめたソフトウェアである。プレイヤーはスティッチ、ドリー、プーさん、シンバの4キャラクターを管理し、タッチペンで撫でる、エサを与えるといった世話を行う。しかし、犬や猫を対象としたシステムを流用した結果、水中にいる魚のドリーをタッチペンで直接撫でて機嫌を取るという、物理法則を無視した特異な光景がニンテンドーDSの下画面に展開される。
当時の購入者や検証コミュニティで具体的な不満点として記録されたのは、DSのマイク機能を用いた音声認識の極端な精度の低さである。ゲームの進行にはキャラクターの名前を呼んで反応させる工程が組み込まれているが、正確に発声してもシステム側に認識されず、プレイヤーは無反応なキャラクターに向かってDSのマイクに同じ単語を延々と吹き込み続ける作業を要求される。マイクによるコミュニケーションというパッケージの謳い文句は、音声認識エラーによる進行の停滞という物理的な障害としてプレイヤーの前に立ち塞がる。
さらに、内蔵時計と連動したリアルタイムの仕様が、プレイヤーに過酷な管理業務を強いる。数日間ゲームを起動しないで放置するとキャラクターの機嫌パラメータが最低値まで低下し、露骨に不機嫌な態度をとるように設定されている。機嫌を回復させるためには、単調なミニゲームを反復してゲーム内通貨を稼ぎ、アイテムを与え、タッチペンで画面を擦り続けるという作業を数十分間にわたって消化しなければならない。女児や幼児を対象としたキャラクターゲームでありながら、毎日の起動とルーチンワークを強要するシステムが構築されている。
ニンテンドーDSの普及期には、「タッチスクリーンで撫でる」「マイクで呼びかける」というハードウェアのギミックを実装するだけで、あらゆるIPがペット育成ゲームとしてパッケージングされるビジネスモデルが展開されていた。ミッキーマウスのような定番ではなく、ドリーやシンバといった「触れ合い」の対象として物理的に違和感のあるキャラクターが選定されている点も、海外デベロッパー主導で開発された版権ゲームの歪な実態を示している。音声認識のチューニングを放棄し、不機嫌なキャラクターの機嫌を取るためだけに画面を擦り続けるという作業をエンディングまで要求する仕様は、DSの機能を無計画に流用した結果、キャラクターとの交流というゲームの根幹が崩壊したまま流通していた時代の物質的な証拠である。