Article 2026/3/26
【DS】マイメロディ エンジェルブック 〜電子手帳&エンジョイゲーム〜
game-list
『マイメロディ エンジェルブック 〜電子手帳&エンジョイゲーム〜』は、女児向けキャラクターIPを使用し、「毎日が楽しくなる電子手帳」という名目で販売されながら、プレイヤーに極端な記憶容量の制限を押し付ける。女児の生活を管理するはずのスケジュール帳は、なぜか「最大120件」しか保存できない仕様となっており、1年の3分の1しか予定を書き込むことが物理的に許されない。日記は365日分記録可能であるにもかかわらず、スケジュールの保存枠だけが枯渇するという、手帳としての根幹を揺るがす構造がカートリッジ内に構築されている。
また、ワイヤレス通信を利用したコミュニケーション機能においても、ハードウェアの電子媒体としての利点がシステム側から完全に放棄されている。友達と交換したプロフィールは24人分、手紙は30通までしか保存できない。DSのカートリッジという広大な記憶領域を持ちながら、紙の手帳以下の容量制限が敷かれており、プレイヤーは新しい友達と通信するたびに、古い友達のデータを手動で削除するという無機質な交友関係の整理作業を要求される。
さらに、「エンジョイゲーム」と称されるミニゲーム群も、極端なボリューム不足と作業の反復で構成されている。収録されているミニゲームは全8種類のみであるが、そのうち最初から遊べるのは5種類に制限されている。残りの3種類を解放するためには、初期状態の単調なミニゲームを延々と反復し、「音符マーク」と呼ばれるゲーム内通貨を稼いで購入しなければならない。女児向けゲームとしての手軽さは存在せず、少ないコンテンツをアンロックするための過酷な労働環境が提示されている。
ニンテンドーDSの市場拡大期には、「タッチペンで書ける」というハードウェアの特性を活かした電子手帳や日記帳ソフトが多数のサードパーティから乱造されていた。発売元のTDKコア(のちのクリエイティヴ・コア)も、前世代機から同種の女児向けタイトルを定期的に投入しており、該当ソフトウェアは当時放送されていたテレビアニメ『おねがいマイメロディ 〜くるくるシャッフル!〜』のIPを利用して企画されたものである。しかし、紙のスケジュール帳をデジタル化するというアプローチにおいて、システム構築の最適化を放棄した結果、「1年の3分の1しか予定が書けず、友達の手紙も30通で満杯になる」という、実用ツールとして完全に機能不全を起こした歪な出力結果を生み出した。子供たちの交友関係や日々の記録を、少なすぎるメモリ容量の壁で物理的に遮断した事実は、「DSのソフトとしてパッケージングすれば売れる」という当時の市場環境が生み出した、機能不全のデータベースの痕跡である。