Article 2026/3/27
【DS】タンクビート
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『タンクビート』は、戦車を操るアクションゲームでありながら、方向キーによる自機の移動とボタンによる攻撃を操作体系から完全に廃止している。プレイヤーが実行する操作は、ニンテンドーDSの下画面に表示された2Dレーダー上に「タッチペンで自機の移動ルートの線を引く」、そして「敵のアイコンをタッチして砲撃する」という2点のみである。上画面にはフルポリゴンで戦車戦が描画されているが、プレイヤーは常に下画面のマップにルートを書き込み続けなければならないため、上画面の3D映像を見る時間は物理的に存在しない。
さらに、この操作体系に加えて僚機への指示というマルチタスクが要求される。プレイヤーは自機のルートを引きながら、同時に下画面のアイコンをタッチして味方に「攻撃」や「防御」といった指示を出し続ける必要がある。しかし、僚機のAIは自律的な回避行動を行わず、敵の集中砲火を浴びてもプレイヤーが的確な退避指示を出さない限り、その場に留まって被弾し続ける。当時の購入者からは「味方が回避せず、ただの的になっている」という具体的な不満が記録されており、プレイヤーは常に僚機の介護とルート描画の並行作業を強いられる。
ゲーム内の機体バランスにおいても明白な破綻が指摘されている。ステージを進めることで装甲の厚い「重戦車」などの新機体がアンロックされるが、後半のステージでは敵の攻撃を一度でも受けると致命傷になるため、機動力による回避のみが問われるようになる。その結果、被弾面積が小さく最も移動速度が速い初期機体の「軽戦車」が、エンディングまで攻略の最適解として君臨する。ゲームを進めて新しい戦車を入手しても、出撃させれば低い機動力のせいで即座に撃破されるため、初期機体から乗り換える意味がないという事実が当時の検証スレで確認されている。
ニンテンドーDSの普及期から中期にかけては、ハードウェアの最大の特徴である「タッチスクリーン」をゲーム内にどれだけ盛り込めるかが、企画承認の一つの指標となっていた。アーケード向けシューティングゲームで知られるマイルストーンもその市場動向に乗り、該当ソフトウェアを企画した。しかし、「戦車の移動をペンによる描画で行う」というアイデアをすべての操作の根幹に据えた結果、「3Dの戦車戦を見ずに、2Dのレーダー画面を凝視し続ける」という歪な出力結果を生み出した。ハードのギミックを無計画に乱用した結果として、ゲームの視覚的なエンターテインメント性が崩壊したまま流通した時代の痕跡である。